JF全漁連のウエブマガジン「サカナディアSakanadia」の連載
『ニッポンさかな酒』にて、
「イカ墨とプロセッコ」の記事が掲載されました。
https://sakanadia.jp/sakana/squidink_venice/
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アドリア海に面したヴェネツィアは、イカ墨パスタ発祥の地といわれている。
店によってそれぞれ味が違っていて、食べ比べてみるのも面白い。
この墨は、コウイカのもの。
イタリア語ではコウイカは「seppia(セピア)」。あのセピア色のセピアである。
地中海沿岸では、古代からイカは食べられてきて、イカ墨はインクとしても使われてきた。
イカ墨インクは耐光性・耐水性にすぐれ、漬けペン用として長く使われていたそうだ。
しかし万年筆になってからは、イカ墨インクの粗い粒子が、
内部の詰まりの原因になって、消えていったという。
イカ墨は粘性が高いので、イカと同じ大きさくらいのかたまりになってしばらく消えず、
イカのダミーとして敵の目をそらす効果がある。
すなわち分身の術である。
ひるがえってタコの墨は、イカ墨ほど粘り気がないので、水中で煙のように広がり、この煙幕効果で敵の視界をさえぎる。
同じ墨を出すにしても、使い方がちょっと違うわけである。
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さて。ヴェネツィアのイカ墨パスタ。
まろやかな甘みとうま味が広がり、生臭さ一切なし。
豊かな海のふくよかさが感じられる味わい。
このイカ墨に合わせるのは、プロセッコ。
ヴェネツィア近くで造られるスパークリング・ワインだ。
シャンパンのように値がはらず、カジュアルに飲めるので、
ヴェネツィアのひとたちはアペリティーボ(食前酒)として、
ふつうのワイングラスで軽く一杯やっている。
もちろん魚にも肉にもあうオールマイティなワインなので、
何を合わせるかと悩んだときはプロセッコ。
また桃のピューレで割ると、「ベリーニ」というカクテルになる。
こちらもヴェネツィアで生まれたもの。
プロセッコはいま日本でも人気。
世界でいちばん飲まれているスパークリングワインだそうだ。
春の夜。
イカ墨スパゲティやイカ墨リゾットに合わせて、みてはいかが?