豚足が好きです。
台湾も沖縄と同じく、豚は「鳴き声以外ぜんぶ」食べちゃいます。
沖縄では、なんといっても、「ティビチ」。
豚足を醤油や砂糖、みりんで煮込んだ料理ですが、
台湾にも、おいしい豚足料理屋さん、たくさんあります。
で、今回はじめて訪れたのは、
「老牌張猪脚飯」というお店。
大同區の民族西路296號、
淡水河の近くにあります。
朝、起きて、病気と勉強の神さまなどをお祀りする
大龍峒保安宮(だいりゅうどうほうあんぐう)にお参りにいきました。
街なかの喧噪から離れ、心も身体も解放されるような
空の広い、ホッとする空間でした。
お供えの仕方を、日本語の上手なイケメンのお兄ちゃんに
しっかり伝授していただき、
教えてもらった順番に従い、7箇所の神さまをお参り。
そして、最後には「紙のお金」を燃やして
神さまに捧げます。
「これからも、健康でいい仕事ができますように!」
【この番号順にお参りします。】
そうして、その足で「老牌張猪脚飯」に。
お邪魔したのは、お昼ごはんどき。
お店の前は、近くの勤め人やおじさん、おばさんで長蛇の列です。
みんな、こんなメニューを見ながら待っています。
ちゃんと日本語も書いてくれていて、ありがたい!
さすが、食の国、台湾!
正午前からすでに、テイクアウトで並ぶひとたちの長蛇の列。
なので、先に店内の席を確保しつつ、
蒸し暑い空気のなか、じっとり汗をかきながら
地元のひとにならって
我慢強く、順番を待ちました。
並ぶの、面倒くさいなあ、
と思いながらも
食べる楽しみで
意外と、あっという間に順番がきました。
待っているあいだ、キッチンから漂ってくるにおいが、
もう、たまりません。
美味しそうなお醤油ベースの、甘〜い香りです。
ますますお腹が空いてきます!
4時間以上、醤油で煮込んだ豚足は、とろっとろっ。
台湾では、おかずをごはんに載せて食べます。
これが、また、めっちゃうまいんです。
この豚足をごはんに載っけると
うま味たっぷりの肉汁が、またご飯にからまって
美味しさがさらに倍増!!
口の中で上品に溶けていく豚足に、
ますます、ごはんもすすみます。
しっかりと下ごしらえされたお肉は
まったく脂っぽくないんです。
ごはんは1杯じゃ足りないかもしれません。
サイドメニューは、汁で煮込んだ卵や豆腐、タケノコやキャベツなど。
【豚のくるぶし。100元。(約365円)コラーゲンたっぷり。色は黒いけど、しょっぱさなし。】
【豚の皮。20元(70円ちょっと)。お皿が透けて見えそうなくらい、じっくりと煮込まれています。 煮卵10元(40円弱)。滷味(ルーウエイ・醤油の煮込み味)の卵をのせました。】
これが、また、おいしい!
台湾の味の基本は、まさに、「滷味(ルーウエイ)」だと思います。
日本のおでんみたいなのが、台湾のルーウエイ。
八角(はっかく)がほのかに効いて、あたたかかくて
庶民的で、心をほっとさせてくれるような味。
それが、ルーウエイ。
この香りと味こそ、ザ・台湾です。
まさに、台湾のひとのように、やさし〜い。
【豚のもも。100元。】
【白いごはん(小)10元(40円弱)には、『しるをかけるか、かけないか?」と訊かれるので、「多めに、かけま〜す!」と大声でこたえます。】
うなぎの蒲焼きと同じく、しっかり汁のしみたご飯が、
丼物のうまさの掟ですよね。
【合わせてとったのが、スンシー(たけのこ)の煮込み。小で、30元(110円くらい)】
おいしい豚足との出会いの後、少し南にもどって、
中山(ゾンシャン、ちゅうざん)駅近くにあるお茶のお店「新純香(しんじゅんこう)」
に向かいました。
「新純香」は、2年前、
ラジオ番組ディレクターの田村直子さんに紹介してもらったお茶の名店。
田村さんは、NHK-FM「音楽遊覧飛行〜食と音楽でめぐる地球の旅」を
ぼくのプロデューサーである女房と三人で、
まったくの白紙から5年間かけて、
一緒に名物番組にまでつくりあげていった戦友です。
田村さんは、音楽はもちろん、食のセンスもすばらしい、
とっても信用できる後輩です。
さて。「新純香」。
ホテル・オークラなどのある中山駅近くにあります。
(中山北路一段105巷13−1號)(オークラとは道をはさんで反対側)
オーナーは王昭瓔(おう・しょうおう)さんとご主人の邱振瑞(きゅう・しんずい)さん。
王さんと邱さんは、日本留学時代に親しくなって結婚。
王さんは、お母さんの開いたお茶屋さんを継ぎ、
高品質の台湾茶を紹介しています。
おいしいお茶とお茶うけ(しいたけチップス、クランベリーケーキ、凍頂烏龍茶で漬けた梅、ドライマンゴーなど)
今回は、王さんのパートナーであり、
詩人・作家・評論家・日本文学翻訳家である邱振瑞さんが
いらしてくださって、二組の台日夫婦のおしゃべりが続きました。
店の外では雷鳴とともに激しいスコールが降り出し、
蒸し暑かった気温も一気に下がりました。
そんな雨粒の音を聴きながら、午後のひとときを、
4人でゆったり過ごしました。
ほんとうに、至福のときでした。
一番右が、王さん。その左が、邱さん。ぼく。その左が、女房・有美子。
日台友好!
国は違えど、文化をたいせつにする、見えないものを大切にするスタンスは
まったく同じ。
【邱振瑞さんの最新詩集『叙情的彼方』 】
邱さんは、川端康成、三島由紀夫、大江健三郎、安部公房、松本清張、山崎豊子などの
翻訳を多数されています。
ちょうど、ぼくの兄のような存在だった中上健次さんの誕生日(8月2日)に、
邱さんと初めてお目にかかって、
中上さんの「路地」の話で、盛りあがりました。
路地は、世界にあまねく存在する。
そう確認しあった、スコールの午後でした。
王さん。邱さん。
下次面!(また、お会いしましょう!)