沖縄滞在2日目。
いよいよ、大好きな琉球宮廷料理「赤田風」に。 こちらも5年ぶり。
首里城のすぐ近くにお店はあるのですが、
なぜか毎回、道に迷ってお店に着きます。
今回は夕暮れの大雨のなか、びしょびしょになって30分も遅れて到着。
ごめんなさい。
メニューはコースのみ。
今回は、10品のコースを選択。
まず、【ポーポー】
一見クレープをくるくる巻いたもののように見えます。
小麦粉を水で溶き、フライパンで焼いたもので、
アンダンスー(油味噌)を芯にして巻いています。
ふわりとしつつ、もっちりとした感触。
そこにアンダンスーの甘みが絡み合って、とても品がいい。
宮廷で貴族たちがハレの日に、食べたものだそうです。
次いで、【中味のお吸い物】
中味というのは、豚の胃袋と腸のこと。
漆塗りのお椀に透きとおったおすまし。
出汁はカツオと豚の合わせ出汁。
その中に、湯葉を2ミリほどの短冊に切ったような中味が少々。
中味は心地よいサクサク感を残しつつ、にゅるり。
湯葉とキクラゲの中間のような何物にもかえがたい食感。
これが臓物だとはぜったいに思えない、繊細で上品な一品です。
ぼくは、この「中味のお吸い物」を食べるためだけに「赤田風」に来たいと思うのです。
京都の料理と通底する雅さ。
王朝時代、首里の料理人は京都に修行に行っていたそうです。
【うむくじ(芋葛)アンダギー】
アンダギーとはドーナツのように種を油で揚げたもの。
アンダが油。アギーが揚げもの。
うむくじとは、甘藷からとったデンプン。
美しい紅色が食欲をそそります。
これまた、淡い甘さが上品。
これだけは、宮廷料理ではなく、庶民の非常食だったそうです。
もともと庶民の主食は芋(甘藷)でした。
【ミヌダル盛り合わせ】
ミヌダルとは、豚の背ロースを薄切りにして胡麻だれをまぶして、蒸したもの。
こちらも古酒(クース)にぴったり。
【昆布(クーブ)イリチー】
イリチーとは炒め煮のこと。
一度炒めたものを、出汁などを加えて煮る料理。
繊細に千切りにされた昆布は、
やわらかななかに、繊維のシャキシャキ感があって、海の野菜を食べているよう。
【ドゥルワカシー】
蒸した田芋とその茎と、薄く下味をつけた具(豚三枚肉、椎茸、カステラかまぼこ)に
豚だしを加え、形がくずれるまで煮たもの。
ドロドロになるまでよくかき混ぜる。お祝いの日、ハレの料理。
ねばっとしつつ、さらっとし、ほどよい脂気がある。
コクのある美味さ。
ウチナーンチュ(沖縄人)がいう「アジクーター」。奥行きのある美味さ。
【ミミガー(耳皮)さしみ】
ミミガーとは、豚の耳のこと。
さしみは「和え物」の意。
クラゲに似たコリコリした食感がたまりません。
すりつぶしたピーナッツ(沖縄ではジーマミと言う)とキュウリが最高に合う。
【ラフテー】
豚の角煮。
ラフテーで重要なのは、泡盛を加えることだそうです。
やわらかさとコクが違ってくるそうです。
じっくり煮込まれたこのラフテー。
箸でスッと切れるほどにやわらかく、表面はべっこう色に光っています。
見ているだけで、もう、たまりません。
【ジューシー】
昆布、ゴボウ、にんじん、かまぼこ、椎茸が入った
「炊きこみご飯」。
そして、店主の城間さんご夫妻が、
【豆腐よう】をプレゼントしてくださいました。
豆腐を4日ほど陰干しし、米こうじ、紅こうじ、泡盛に漬けこみ、
6カ月ほど熟成発酵させたもの。
これは、古酒の最高のさかな。
「赤田風」の料理は、
「沖縄の青空を軽やかに流れる雲」のよう。
味わいは淡く、軽やか。
その軽みに達するまでに、どれだけの時間と手間がかかるのだろう
といつも思います。
でも、決してそんな労苦をおくびにも出さない品の良さ。奥ゆかしさ。
「美味しい記憶」だけが残ります。
今回、久しぶりの「赤田風」で、食の幸せとはこういうものなのか、
とあらためて思いました。
沖縄に行くと必ずお邪魔するたいせつなお店です。