7月10日に、ぼくの初めての時代小説
『江戸酒おとこ』が上梓されます。
テーマは江戸時代の清酒です。
時代は1804年(文化元年)。
そのころ江戸では、
上方(伊丹や池田、灘)の酒が
いまでいうプレミアムビールのような感じで、
少し価格は高かったのですが、人気でした。
江戸でも酒をつくっていたのですが、
いつも江戸自慢する江戸っ子が、なぜか江戸酒(えどざけ)を卑下していました。
というのも、江戸酒は質がわるかったからです。
(でも、安かったので、江戸っ子は飲んでいたようです)
小説の主人公・小次郎は、灘に生まれ育った青年。
素行がわるく、実家の造り酒屋を追われて、江戸の親戚酒屋に下り、
江戸酒をつくって、そのバージョンアップをはかっていくことになる
──という物語です。
主人公とともに酒造りをになうのは、
福山で藩の酒つくりをしていたが、派閥抗争に敗れ脱藩、離縁された訳あり浪人。
町角で芸を披露する願人坊主。
三味線弾き、かわら版屋。
琉球からやってきた男。
西洋かぶれの蘭学者など。
江戸の「あぶれ者」やちょっとした「アウトサイダー」たち。
そんな男たちが、
メジャーでプレミアムな下り酒(くだりざけ=上方から江戸に下ってくるので、下り酒といわれました)
に挑戦していく物語です。
* * *
おとこの友情はもちろん、恋あり、裏切りあり、
いまの世の中と同様に、賄賂あり、忖度あり。
そして、格闘シーンあり。
ありがちな江戸のちまちました人情ものではなく、
せつないけれど、涙はみせず、
笑いを忘れぬハードボイルド・タッチ。
梅雨あけの青空のような作品になっていれば、と思います。
ぜひ、ご一読いただければ、うれしいです。