ウイスキーは人間味
あの街の、あのマスターに会いにいこう
きっと、やさしい時間が待っている
この地球上で、人間しか酒を飲む生きものはいない。
ほんとは人間の心が酒を 飲んでいる。
だからこそ、マスターの人間性が酒に映り込むのである。
マスターの話にはその土地のにおいがあり、空のいろがあり、水のかげ、風の そよぎがある。
「あのマスターに会うために、あのバーで、あのウイスキーを飲みたい」
そういう夢のような旅に出ようと思った。
大切なのは、ぶれずに誇りをもって生きること
この本に登場いただいた 11 人のマスターたちはおとなだけれど、
ニューポット(蒸留したての透明な 原酒)を思い出させるいびつさを、みんな今もどこかに残している。
少年の純な心がある。反骨がある。
そして、その「いびつ」が時を経ることで、
ほどよく枯れて、ほのかに苦みをもった恬淡の味になっている。
そう。じつはマスター自身がウイスキーなのだ。
ぼくらに必要なのは、苦みを知った「ウイスキー的生き方」ではないか。
老いるとは、皺に味のある、色 っぽいオジイオバアになること。
個性のあるモルト・ウイスキーになることだろう。
(「はじめに」より)
「人は多数決で生きるんじゃない。アイラ・モルトの香りは決して多数派に支持されない。
でも、強い味 方がいる。それでいいじゃないか。
大切なことは、いくら向かい風が強くても、ぶれずに誇りをもって生きることだよ」
ウイスキーは、そして、ぼくの敬愛するマスターたちは、そう教えてくれている。
(「あとがき」より)
あまた 数多ある類書とは異なり、新たな境地を拓くエッセイ
カタログでもなく、うんちくでもなく、思いこみでもない 11人のマスターが語る「ウイスキー的」おとなの生き方
- ●ウイスキー銀河鉄道の夜 ―― 大阪「十三トリスバー」江川 英治
- ●一浴一杯、また一杯―― 松山「バー露口」露口 貴雄
- ●花鳥風月、ウイスキー ―― 東京「絵里香」 中村 健二
- ●オホーツク流氷ロック ―― 網走「バー・ジアス」 鈴木 秀幸
- ●石垣・風まかせ ―― 石垣島「エレファントカフェ 」吉竹 浩樹
- ●雨の大阪アイリッシュ ―― 大阪「ザ・テンプルバー」上野 一男
- ●スタンド・バイ・ミー ―― 大阪「堂島サンボア」鍵澤 秀都
- ●そして、神戸ハイボール ―― 神戸「サヴォイ北野坂」 木村義久
- ●人生、ゴキゲンで行こう ―― 仙台「モンド・ボンゴ」 河野隆一郎
- ●光の酒には,骨がある ―― 仙台「ル・バール・カワゴエ」 川越正人
- ●ウイスキーは寂しい―― 東京「バー武蔵」 武蔵昌一