旅は、那覇の牧志(まきし)公設市場からはじまった。
そこは活気に溢れ、子どものころのお祭りや縁日の雰囲気とそっくりだった。
二階にある食堂「きらく」の李さんとの会話がきっかけで、
ぼくは、ざっくばらんな沖縄の食の魅力に惹かれていった……。
国をあげてのもてなし料理だった宮廷料理を食べに、かつての王都・首里(しゅり)へ、
神さまと人とが一緒に食事をするお盆の夜を過ごしに友人宅へ、
戦後、アメリカや南米の影響を受けた現代沖縄料理へ、フルーツのくに・山原(やんばる)へ。
そして、沖縄の心の真ん中に座っている古酒(クース)の世界へ。
人と出会い、風に揺られ、身体で感じながら見えてきたものはー。
(本文「プロローグ マチグヮーの2階から」抜粋)
那覇空港に着く。飛行機の扉が開く。
その瞬間から、ねっとりとした空気に包まれ、身体中の細胞がいっきに開いていく。
沖縄の旅は、ここから始まる。
まず、向かうのは牧志(まきし)。
市場本通りをゆっくり歩いて、公設市場の周りをぶらぶら。
たどり着くのは2階の食堂街。
人と物のざわめきが始終、空間にこだましている。その喧噪が徐々に心を解き放っていく。
さまざまな音と匂いが、心地よいヴァイブレーションで心身をマッサージしてくれる。
ああ、沖縄にやって来たんだ。
グラスまでキンと冷やした生ビールを、ググッと飲み、フーッと一息。
さ、何を食べようか。
このひとときが、大好きだ。
今日一日どうするか、それは後で考えよう。
- (本書の構成)
- プロローグ マチグヮーの2階から
- 第1章 宮廷料理
- 第2章 神さまと食べる
- 第3章 ネガティブをポジティブに
- 第4章 アメリカから、南米から
- 第5章 フルーツのくに、山原(やんばる)へ行こう
- 第6章 泡盛ルネッサンス
- 第7章 与那国(よなぐに)花酒(はなざけ)紀行
- エピローグ 生きることは食うことや